老人ホームなどの認知症の高齢者が住まう環境では、加齢により低下した身体機能への空間的配慮のみならず、認知症特有の症状にも配慮が必要になります。認知症の人の中にはストレスが溜まり、妄想、興奮、不安などの状態になる人もいるといいます。これらのこころの状態を癒すことが求められます。
回想法とは、懐かしいと感じる道具や写真などを利用し、高齢者の発話のきっかけをつくります。会話することで、懐かしい・楽しい思い出を蘇らせ、心の安定を図る心理療法のひとつです。認知症予防にもなると言われていますし、認知症の方にも良い効果があるそうです。老人ホームの中には、入居されている方々が幼少期や青年期時代に使われていた道具などを常時飾っているところもあります。これは日本のみならず海外でも行われています。
京都市内にある老人ホームで回想法を生活環境に取り入れ、その効果を測る研究をしています。施設の職員さんからのお話では「神社やお寺さんにお参りに行きたい」という入居者さんが多いとのこと。
関西地方では8月のおわりに、お地蔵さんに飾りやお供えをする「地蔵盆」という、子供によって行なわれるお祭りがあります。京都に住む人にとってお地蔵さんは馴染み深い存在であり、日常的にお参りする存在です。そんなお地蔵さんを設置しました。
「お地蔵さん」は4階建ての施設の3階居住エリア内に設置しましたが、他の階の入居者さんらも“お参り”に来られる様になりました。ここへ来た人たちは皆一様にお地蔵さんに手を合わせ、感謝の気持ちを伝えていまいた。
老人ホームの居住エリア内に設置された「お地蔵さん」と「お参り」する入居者さん