家具の転倒防止を前提に “組み込むデザイン”

NATS環境デザイン_神戸の夜景_阪神淡路大震災_家具の転倒防止

1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災から明日で26年になります。そしてあの日、私は神戸の自宅の寝室で被災しました。その際、中型家具が頭上に倒れ顔を負傷した経験から、家具の固定は私たちができる“いのちを守る行動”のひとつであると考えています。

「家具を壁に固定する」ハードル

家具の転倒防止として効果が高いのは、L型金具を介してビスで壁に固定する方法です(図)。戸建て住宅やマンションの間仕切り壁の多くは、木材や軽量鉄骨が30センチ間隔に立てられた間柱の上に石こうボードが貼られています。強固に家具を固定するには壁下の間柱までビスを打つ必要があります。「間柱がどこにあるのかわからない」がひとつ目のハードルです。

ふたつ目のハードルは「賃貸物件は壁に穴をあけてはいけない」という借主貸主の共通認識です。国交省が出している賃貸住宅の退去時に関する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、壁等のくぎ穴やネジ穴は「借主による通常の使い方では発生しないもの」と位置付けられています。また「家具転倒防止の措置の場合は貸主の承諾(を求める)」とあります。

家具の固定は私たちができる“いのちを守る行動”のひとつです。それを前提とした「だれもが」固定しやすい間仕切り壁の構法や材料の一般化、「地震対策は故意の傷(ネジ穴等)ではない」という認識が一般化することを希望します。

NATS環境デザイン_阪神淡路大震災_家具の転倒防止_家具転倒防災器具の効果

図 家具転倒防災器具の効果

出典:KOBE防災ポータルサイト https://www.kobe-sonae.jp/

おしゃれな家具はおしゃれなままで

「家具の固定(転倒防止)」と聞くと背の高いタンスや本棚などイメージしがちですが、背の低い家具や小型家具でも、地震の揺れが激しければ飛んでくることもあるので固定は必要です。背が高く上端と天井とが近い家具なら、伸縮棒の設置やL型金具を取り付けてもあまり目立ちません。しかし近年の家具は多種多様なサイズや形状のデザイン性に富んだものの方が主流です。目立つ場所に固定器具を取り付けることに抵抗を感じてしまうのも心情です。

北欧発祥の世界的家具店の商品には、家具を固定することを前提に固定金具がデザインの中に組み込まれています。「目立ちにくい場所」そして「転倒防止の効果が高い場所」がプロによって示されています。

さりげなく安全な技を隠し味に、おしゃれに美しくデザインすることもユニバーサルデザインとして考えておきたいことです。

NATS環境デザイン_IKEA01_阪神淡路大震災_家具の転倒防止
NATS環境デザイン_IKEA02_阪神淡路大震災_家具の転倒防止

図 大小問わず、各家具には壁への固定用の金具が用意され、説明書にも記されている

出典:IKEAオンラインストア https://www.ikea.com/jp/ja/

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