目の不自由な人が安全・安心に、そして迷わずに移動・歩行できるようにするための設備の代表的なものに、視覚障害者誘導ブロック(以下、点字ブロック)や触知案内サイン、音声案内などがあります。公共施設での設置は一般化していますが、施設によっては建物の状況により設置が困難なところもあります。
目の不自由な人は主に、全く見えない全盲者と低視力などの見えにくい状態の弱視者がおられます。外出時の歩行の際に役立つものをきくと、一様に「点字ブロック」「電子チャイム」「音声案内」が “ 役立つ ” と回答されています。一方でこれら “ 視覚障害者のための設備 ” 以外の「ガードレール」も役立つと評価する人が多くなっています。
目の不自由な人は多様な環境を歩行の手がかりにする技術をもっています。そのため全盲者は「店からの匂い」「水の音・匂い」を、弱視者は「路上のライン」「光」を歩行に役立てています※。
出典:田中直人、老田智美、彦坂渉「視覚障害者の生活訓練指導者の意識から見た方向支援事物の有効性と因子-五感を活用した歩行支援方法に関する調査 その2-」日本建築学会大会学術講演梗概集計画系E-1, 2007
※ 全盲者36人、弱視者36人を対象にヒアリング調査を実施。
目の不自由な人の歩行にとても有効な点字ブロックですが、必要とされる場所に必ず敷設されているわけではありません。また様々な理由で敷設が難しいところもあります。前述の調査でもわかったように、目の不自由な人には様々に存在する環境アイテムをうまく活用し、歩行の手がかりにする技術があります。もし点字ブロックが敷設できなくても、それに代わる例えば誘導を意識した床デザインの導入など、“ ちょっとした配慮 ” をするだけで目の不自由な人にとっては有効な歩行支援アイテムになります。
一方で点字ブロックを敷設したとしても、敷設する環境や方法にも配慮しないと、役立ち度が低下することもあるので気をつける必要があります。
弱視者にとっての点字ブロックには視覚的なわかりやすさも求められます。歩道の模様も弱視者にとっては別物に見えるかもしれません(写真左)。シンプルなラインの場合、仮に点字ブロックでなくても弱視者にとっては有効な歩行支援アイテムになります(写真右)。
デンマークに視覚障害者のための休暇センターがあります。“ 非日常 ” を楽しむための演出として空間デザインは重要です。ここでは歩行時や現在地把握への支援アイテムとして、機械的な設備をなるべく置かないように配慮されています。例えば施設の玄関近くには「鳥小屋」が置かれています。「電子チャイム」の代わりに「鳥のさえずり」が用意されています。
施設用途の種類の分だけ過ごし方も異なります。「法基準どおりの設備の導入」だけが、目の不自由な人への配慮とは限らないかもしれません。
廊下の曲がり角に設置された噴水オブジェ。水の音とマイナスイオンの匂いで場所を知らせている(写真左)。玄関近くの鳥かごからは鳥のさえずりが場所を知らせてくれる(写真右)。